【読書メモ】言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか [1] の読書メモ.読むモチベーションはというと,漫才についての考え方が体系的に書かれており,その考え方を知りたい…といった高尚なものではなかった.単純に以下の文章が心に引っかかって(というより何か共感を覚え),生きる知恵か何か記載されていないか気になったことが始まりである.

どうしたらウケるか.

この一点です.僕はそこだけに生きる意味を見出し,そのお陰で,日本人に生まれた以上,平等に訪れるだろういくつかの人生の山を乗り越えることができました.

ただ,自分では,それが才能だという自覚はありません.どちらかというと,一種の病なのだと思います.(P.14 「プロローグ」より)

芸人という職業は選んだというより,芸人として生きるしか術がなかったのです.(P. 82 「Q 28 芸人になりたかったというより,なるしかなかったように見受けられます」より)

(参考:過去の読書メモ.読みはじめのきっかけは近いかもしれない.) www.y-tana.net

所感・引用(気になった部分)

所感はただ1点,合っていること(≒好きなこと)をやることの重要性である.試行錯誤は自分の合っていることを見つけ,その合っていることの全てのリソースを費やすためにあるのだと感じさせられた.以下該当すると考えられる部分を引用する.

  • 「Q4 よく「練習しない方がウケる」と言いますよね?」の一節.

ネタ合わせをしないでやったネタの方が,本番で断然ウケるんです.

最初は不思議だったのですが,だんだんその理由がわかってきました.練習しなくても良いネタは,ネタそのものがおもしろいし,そもそも自分たちに合っているんです.逆に練習しなければならないネタは,ネタがつまらないか,自分たちに向いてないんです.

  • 「Q 33 「量より質」と言いますが,量をこなさなければ質は上がってこない」の一節.

量をこなして,初めて気づいたことが二つあります.

一つは,僕らはどうもボソって言った時の「小ボケ」がウケるらしい,という点です(中略).

もう一つ気づいたこと,それは,好きなことをしゃべればいいんだということです.

それまでの僕は,ネタ中に噛んでしまうことがよくありました.原因は練習量や技術が足りないからだと考えていました.ところが,そうではなかったんです!

小ボケをしている時は絶対,噛まないのです.自分のオリジナルのネタだから.自分がそういうのが好きだから.

僕は野球と相撲が好きなので,それらのネタもよく書いていました.すると,どうでしょう,やはり噛まないんです.しかも,好きなことだけに熱を持って話すから,お客さんにもその熱が伝わり,笑いが起きる.(中略)

好きなものを異様に熱く語るだけで,それはボケになる.

  • 「Q 66 日本漫才史上,イケメンであれだけうけたのは徳井さんぐらいでは?」の一節.

(チュートリアルが M-1 グランプリで活躍した)2005, 2006 年と,(中略)こういうボケを入れておけば無難に笑いを稼げるだろうみたいな「逃げ」の笑いは一切ありませんでした.伸るか反るかの大博打.スタトから飛び出して,あとは馬なり.手綱を締めることなく,最後まで攻めまくるネタでした.

売れるコンビは,ある時点で,自分たちのストロングポイントに気付くものです.無駄を削ぎ落とし,自分たちにしかできないところ,魂が乗る部分を広げていくのです.

以上

  1. 塙 宣之, "言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか, " 集英社新書, 2019. ↩︎