スポーツチャンバラの後輩より,「『ワールドトリガー』はただ面白い漫画であるだけではなく,スポーツチャンバラにも応用可能な心得(考え方)が散りばめられている」という話を聞いた. 上記検証のため,同漫画について単行本化されている21巻分(2019/12/31 現在)を全て読んだ.結果,参考になる部分が複数確認されたため,以下にまとめることにする.
参考になる部分(及び筆者のコメント)
「ダメで元々」「負けも経験」いかにも三流の考えそうなことね 勝つつもりでやらなきゃ勝つための経験は積めないわ (コミックス5巻 第35話より)
木虎のセリフ.勝つつもりでやるからこそ相手との差が性格に把握できる.
自分が持ってるもの 相手が持ってるもの お互いの狙い 戦場の条件 仲間の位置 あらゆる要素を使って相手の動きをコントロールするんだ (コミックス5巻 第36話より)
烏丸が主人公のメガネくん(三雲)へアドバイスしている際の一節.スポーツチャンバラも相手がいて成立するスポーツであるため,自分だけ,相手だけではなく双方把握していることが重要1. 尚,後半の「戦場の条件」及び「仲間の位置」という概念は合戦で活きる概念である気がする.
「人間はけっこう理屈に合わない動きをする」「理屈より習性とか性格とかを読んだ方がいい場合も多い」 (コミックス5巻 第41話より)
「動きに整合性がない」「きまぐれな」緑川に対して空閑がどのように相対するか回答した時のセリフ2.理屈は,試合(の動画)を観察することで得られる習性を分析することで帰納的に得られる場合が多いのではないか,と個人的には考えている3.
隙を突いて反撃をねじ込むイメージがなきゃ 相手の隙に気付くこともできないぞ (コミックス6巻 第50話より)
メガネくんの師匠である烏丸が訓練時防戦一方のメガネくんに言ったセリフ.足引き面,しゃがみ足といった打ちについて,相手が打つと分かっているという理想的な環境で練習するのは,反撃をねじ込んだ際に成功した時のイメージをインプリントするため,であるとも言える.成功した時のイメージがあれば成立するための条件を逆算して構築することが可能となる.
「有利な部分で勝負する」 「不利な部分では戦わない」 (コミックス12巻 第101話より)
空閑パパ直伝勝負の心得.筆者が常に心掛けている部分である.当たり前の ように聞こえる心得であるが,少なくとも自分の正確な実力を把握していないと実現できない.
「武器がないからこそ用心深くなる」 (コミックス12巻 第106話より)
悩んでいるメガネくんに師匠である烏丸(とりまる)が言ったセリフ.この用心深さは「有利(不利)な部分」を正確に理解する上で役に立つ.
「戦術で勝負するときは敵の戦術のレベルを計算に入れる」 (コミックス13巻 第110話より)
東隊が戦術を確認する場面の一節4.フェイントという戦術を例に挙げる.フェイントはその動作が攻撃の別の予備動作であると分かってくれる相手にしか効果のない戦術である.攻撃パターンを把握していない相手に対してフェイントをかけても予想外の反応となる可能性があるため,使用は難しい5.
ほとんどの人は誤解してるけど 獲物を仕留めるだけが罠の役目じゃないわ 「罠があるぞ」と思わせるだけで相手の行動を迷わせることができるし 罠に注意を払わせることで 相手の意識を散らすことができる (コミックス14巻 第122話より)
木虎がメガネくんにスパイダー(トリガーの一種.直接のポイントにはなりにくい)を教えた際のセリフ.直接的には出技をとりあえず見せておくことの効能に相当する.筆者の場合は得意な技に注意のリソースを大きく割いてもらい,別の(大したことない)技を当てる戦術にも重なる部分もある.さらに言えば,何もしないことによって「罠があるかもしれない」という疑心暗鬼に陥らせるという戦術もあったりする.
さいごに
筆者はほとんど漫画は読まないが,「スポーツチャンバラのため」という目的があったためか今回はとても楽しく読むことができた.もしもスポーツチャンバラに役に立ちそうな漫画・書籍等があればご教示ください(記事化もしたいと考えています).