【読書メモ】マンガでわかる地政学 改訂版

マンガでわかる地政学 改訂版 1 の読書メモ.読書の背景は,今年 2022 年のロシアのウクライナ侵攻に関連して漫画「紛争でしたら八田まで」のウクライナ編が無料公開されたことがきっかけである.当該漫画より,地政学という学問が戦争発生の背景等の理解に役立つことを知ったため,地政学の知識を得たいと考えるようになった.

なお,地政学の本格的な書籍として過去友人に地政学入門 改版2 を勧められたが,パッと見本格的な書籍で門外漢の自分は挫折しそうであったので「マンガでわかる」とありとっつきやすそうなものを読んだ次第である.

所感

地政学について,主に大国(例:アメリカ・ドイツ)の観点から説明されていた書籍であり,初学者が地政学のメインストリームを正確に理解する上では役立つという印象を受けた.「マンガでわかる」とあるが,結構文章がメインであるのでそれなりにしっかり地政学が理解できる(マンガは文章のアブストラクトとして機能している印象であった).地政学について無知であったこともあり,個人的には今までない発想を学べた(後述).

なお,地政学そのものに関しては,中々奥深い世界のようであり,一度パッと読むだけで全てを理解することは難しいという印象を受けた.複数回読み直したり,別の書籍を読んだりする必要があると感じている.とりあえずは書籍の冒頭に記載されていた以下の地政学の基本原理だけは頭に入れておこうと思う.

  • 国家の行動原理は生き残りである
  • 隣国同士は対立する
  • 敵の敵は味方

引用(気になった部分)

グローバリズムは,アメリカ国民の利益を損いました.地球の裏側まで米軍を派遣するための税金の浪費,安価な工業製品の流入による雇用機会の損失.まさに「少数の人たち」の利益のために,「米国民が負担を担わされた」のです(P. 37 より)

上記の理由からトランプ政権の「メキシコ国境の壁」建設は地政学上合理的な行動であると説明しており,目から鱗であった.なお,「少数の人たち」というのは国際金融資本(ウォール街)・多国籍企業のこと(ディープステートともいわれる).「少数の人たち」は大手メディアを牛耳っていることもあり,トランプ政権を執拗にバッシングしたとも記載されている.

鎖国は内向きな外交政策と思われがちですが,そうではなく,重武装中立という地政学的な視点に基づいた,高度な政治判断だったのです(P. 194 より)

鎖国政策についてのポジティブな面を初めて知ったかもしれない.「重武装中立」とあるが,これは日本の鉄砲の保有数が世界最高水準に由来するものであったらしい.

備考

地政学の本 1 冊では知識が偏るかもしれないと考え,佐藤優の地政学入門 3も読んでみた.この書籍は,比較的薄く,イラストが多い(そのため読破が容易であると考えた.安直である).Part 1 に地政学の基本的な部分がまとめられている点が良い.ただし,鳥瞰的に地政学を把握するという観点では今回紹介の「マンガでわかる地政学 改訂版」の方が良いかもしれない.

以下に,「佐藤優の地政学入門」(主に Part 1)より得られた地政学の知識についてまとめる.

  • 地政学は Geo-politics という:地理は大きく変化しないので状況をシンプルに理解する上で役立つ.
  • 国家はシーパワー(海洋国家)とランドパワー(大陸国家)に大別される.
    • シーパワーの代表例:イギリス・アメリカ・日本
    • ランドパワーの代表例:ロシア・中国・ドイツ
  • シーパワーとランドパワーは対立しやすい.またこれらは両立しない.
    • 日本の第二次世界大戦の敗戦理由はシーパワー(アメリカ)・ランドパワー(中国)双方に喧嘩を売ったことが原因である(双方を両立させようとしたことに相当する).
      • p.s. 「マンガでわかる地政学 改訂版」では,海軍(薩摩藩が母体)と陸軍(長州藩が母体)との間で,仮想敵国の認識が一致していないことが原因として指摘されている.
  • チョークポイント:海上輸送路(シーレーン)の要衝.
    • マラッカ海峡,ホルムズ海峡等が該当.
  • バッファゾーン:大国間の小国.大国間の緊張を緩衝する国家.
    • ロシアと西側諸国にとってウクライナはバッファゾーンに相当する.
以上

  1. 茂木 誠, “マンガでわかる地政学 改訂版”, 池田書店, 2020/12/10.

  2. 曽村 保信, “地政学入門 改版”, 中公新書, 2020/07/20

  3. 佐藤 優, “佐藤優の地政学入門”, 学研プラス, 2022/03/17.