電波工学基礎シリーズ2 電波伝搬 の読書メモ.大学時代,研究背景を説明する際「電波伝搬」という語句を口にしていたが正直あまり理解しておらず,同語句の理解を深めることを目的として読むことに.
結果
電波伝搬の定義及び研究意義は序章に簡潔にまとめられていた.以下引用.
電波伝搬とは,送信アンテナから放射された電波信号が,受信アンテナにより受信されるまでに経た,信号の変化を示すものである.電波伝搬の研究とは,この信号の変化を理解することが目的である(P.2 より).
すなわち,送受信間の(伝達)関数のことを指す.当該関数は利得・位相変化・遅延特性等からモデル化される.順問題として捉える場合,送信電波に対して受信結果が設計した関数どおりの応答を示しているか,という部分が関心事になるだろう.また逆問題として捉える場合,空間(大気・電離圏など)の環境がどのようなパラメータに支配されているか,という部分が関心事になるだろう. また電波伝搬を理解する際には電気回路とのアナロジーを考えると良いらしい.すなわち信号処理及び制御理論に関連する話が出てきても全く不思議ではない(例えば,逆問題として捉えた場合にはある種の「システム同定」ができるとアツい).
備考
- 電波工学(電波伝搬)の分野では,研究室時代に聞いた(今後一生使わないであろうと考えていた)ワードは普通に使うらしい.ナイフエッジ回折とか,レイトレーシング法とか,アイオノゾンデ(ionosonde,イオノゾンデとも)とか.物事に無駄なものは存在しないんだな,としみじみ感じる.アイオノゾンデの説明が個人的に分かりやすかったので以下引用する.
周波数を1〜10MHz 程度の間でスイープして電離層反射高度を連続的に測定する装置のことをアイオノゾンデ(ionosonde),得られる曲線を「h'-f 曲線」あるいはアイオノグラム(ionogram)という(P.42 より).
アイオノゾンデは,電離層反射高度を測定する装置であり,電離層反射高度から電離層の電子密度を推定,推定結果から電離層伝搬時の使用可能周波数・到達距離を求めることが主たる目的である.
- 電波伝搬は電気回路のアナロジーで説明可能であるとのことなので,実は電気工学の分野って何でも電気回路に帰着するのではないかと思ったりする(例えば,電気磁気学で電磁波を扱う際波動方程式が出てくるが,電気回路においても電信方程式として同様の式が出てくる).
オマケ
同じ電波工学基礎シリーズの電波工学基礎シリーズ1 電磁波工学は先に購入したはずなのに読んでいない.何故2番目から読んだし.
参考文献
- 岩井誠人, 前川泰之, 市坪信一, "電波工学基礎シリーズ2 電波伝搬, " 朝倉書店,2018.
- 広川二郎, 新井宏之, 木村雄一, "電波工学基礎シリーズ1 電磁波工学, " 朝倉書店,2018.