量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性 1 の読書メモ.著者は量子コンピュータ開発の最前線に立つ研究者である.量子コンピュータというコトバはよく聞くが,その中身を理解していない現状があり,当該書籍を手にとった次第である.
個人の意見であるが,「本物」が書いた内容は,表面だけ知っている人が書いたものよりも理解が進むと考えている.というのも「本物」は対象と向き合ったときの「哲学」(考え方)を書いてある場合が多く,それが読み手の心を抉るためである.
以下は書籍を読んだ際の気づき及びメモである.
- 量子コンピュータは「波を使った計算装置」である.
量子コンピュータとは,いくつかの可能性の波のを重ね合わせて,それらを干渉させて波の大きさを変えたり,タイミングをずらしたりして,重ね合わせ具合を変化させながら問題を解く装置なのです(P.87 より)
波動の干渉を上手に使うことで複数の情報を含んだ場合を同時に扱うことが可能.またその性質上波動現象に関する問題が効率良く解ける.
- 複数情報を扱っているが,最終的に取り出せる情報はそのうちの1つだけである.
かなり強力な制約:全部の情報を総当たりに計算するというわけにはいかない.最適解だけを取り出す,といった場合は制約なく量子コンピュータを扱える.
- そもそも量子とは:非常に小さな物質や量の単位である.
量子,という物質ではない.原子・電子・陽子・中性子等,非常に幅広い範囲を指す言葉である.ちなみに光子(フォトン)も量子の範疇であるが,これは光のエネルギー量の最小単位を指す.
- 量子コンピュータはノイズに弱い:誤り訂正が future work である.
ノイマン型コンピュータ(現在使われているコンピュータ)と違い,量子コンピュータはビット間に相関関係がある.そのためノイズ(誤差)が積算する特性がある.ビット間に相関関係があるからこそ複数の情報も扱える部分があるため難しいところである.
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武田 俊太郎, “量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性,” 技術評論社, 2020.↩