なぜ退社して博士課程進学することを決めたか

筆者は修士課程終了後,とある企業に入社,研究開発部門に配属されることになったのであるが,そこでの経験から以下列挙する所感を得た.そして大学時代の研究がしたくてたまらなくなり,一度きりの人生,思い切って退社した上で博士課程に進学,勝負する覚悟を持つに至った.

  • 世の中に役に立たない研究はないことを思い知った
    • 企業入社前,所属研究室の研究に関係する電磁波伝搬の知識は(恥ずかしながら)役に立たないものばかりであると思っていた1.しかし入社して自分で勉強するなり周りの人の業務を見るなりしていると,実は当該知識が問題解決・新アイデア創出に役立つ(可能性が高い)ことに気がついてしまった2
  • 大学時代の研究内容が超エキサイティングであることに気づいてしまった
    • 端的に言えば,電磁波という非常に興味深い情報媒体を利用して非常に遠くのものや未来を明らかにする研究であったことに気がついてしまった3.そういえば,となってしまうのであるが電磁波は以下の性質を有する情報媒体である.
      • 最速で到達する媒体である
      • 偏波も情報として活用可能である
      • 直交性の性質を活用しやすい
      • 媒質の影響で振幅・位相・伝搬方向が変化するため空間中の媒質情報が得られる
      • 粒子の状態を統計的な観点から記述する際使用されている(cf. シュレディンガー方程式)

なお,博士課程進学に際して主に以下を参考にしました.

以上

  1. 研究室は宇宙空間のリモートセンシングが専門であり,電磁波伝搬に関係する手法(例:光線追跡法)なり伝搬に影響を与える宇宙プラズマ環境変動(例:電離層擾乱)の話が主であった.機械学習手法をデータに適用することにしか興味を持っていなかった入社前の自分にとって,これらの話は全く以って無駄な知識であると(本気で)思っていた.そして残念ながらこれらの知識は身につけず入社に至った.

  2. 宇宙プラズマ環境の知識(具体的には電離層擾乱)が社会にとって必要である可能性が高いと知ったときの衝撃は計り知れなかった.

  3. 不思議なことに,会社業務に関係する知識を勉強していた時に,(なぜか)大学時代の研究の知識にビビっと結びついた.