アダプティブアレーアンテナの知識を日本語で得てみるぞい

以下の記事にあるように,論文等難しい英文を読む前には日本語で前提知識を得ると良いらしい.

https://ocoshite.me/how-to-read-scientific-articles

今回はアダプティブアレーアンテナ(電磁波環境に応じて適応的に動作するアンテナ,以下「アンテナ」を省略)を扱った2つの文献(解説論文)について自分なりのメモをまとめる.これで英文もいけるぞ…と思いたいがもうすでに「お腹いっぱい」であったりする…

  • 移動通信におけるアダプティブアレーアンテナ技術の応用1: 移動通信からアダプティブアレーをまとめた論文.アダプティブアレーの考え方はは古典的にソナー・レーダに適用されてきた.そのため性能評価は専ら適用後の受信信号の SINR(Signal-to-Inference-plus-Noise Ratio)が中心であった.しかし移動通信ではビット誤り率(BER: Bit Error Rate)の改善量が議論の中心となる.アダプティブアレー一般の性質についてもよくまとめられており,FIR フィルタと比べてより一般的な問題として扱う必要があること(§3.2)が記載されていたり,古典的手法がまとめられていたり(表1)する.
  • 移動通信における信号処理アンテナの進展2: MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)システムを軸に,アダプティブアレーを概観した論文.自分は本論文で初めて空間分割多元接続(SDMA: Space Division Multiple Access)によるマルチビーム形成のアイデア(図6)を理解した.マルチビーム形成時は,受信信号 $\boldsymbol{x}(t) \in \mathbb{C}^{L \times 1}$ に,複数の重み(アダプティブウェイト)$\boldsymbol{w} \in \mathbb{C}^{L \times 1}$ を乗算してあげれば OK.すなわち $\boldsymbol{W}=[\boldsymbol{w}_1 ... \boldsymbol{w}_M ]$として,$M$ 本のマルチビームは $\boldsymbol{W}^{\mathrm{H}}\boldsymbol{x}(t)$ で形成される(H は共役転置を表す).

  1. 辻宏之, & 水野光彦. (1999). 移動通信におけるアダプティブアレーアンテナ技術の応用. 電子情報通信学会論文誌 A, 82(6), 779-791.

  2. 小川恭孝, 西村寿彦, & 大鐘武雄. (2017). 移動通信における信号処理アンテナの進展. 電子情報通信学会論文誌 B, 100(9), 658-672.