ゼロから学ぶ統計力学 (ゼロから学ぶシリーズ) (参考文献1)を読んだので,所感等を備忘録としてメモする.
(参考:Amazon ホームページ)
https://www.amazon.co.jp/dp/4061546767/?tag=hatena_st1-22&ascsubtag=d-1hlkj
読むモチベーション
- 宇宙空間上の電磁波動現象をミクロな観点から理解するには熱・統計力学の知識が必要であることを知り,急に興味が出た.
- 大学生のとき熱・統計力学を受講したがチンプンカンプンであった.せっかくだからせめて初歩ぐらい理解したい.
所感
統計力学の考え方が丁寧に記載されていて良かった.適度に数式がありそれが理解の助けにつながった.
熱力学の知識が無くても読み進められる.純粋に統計力学の説明に焦点を当てている.
情報工学でもちらほら見かける「エントロピー」「ボルツマン分布」の理解を深める上でも役に立つ.工学出身の人こそ読むべきなのかも.
引用(気になる部分)
以下2点. その1. 本書(参考文献1) P.121 より.問題を解決する際には条件を狭めるだけではなく,緩和するのも有効である.
なぜ正準統計の方法のほうが,小正準統計の方法より計算が楽なのか,イメージを述べておこう.小正準統計では「エネルギー一定の状態」だけを考えるから,それらの状態を集めた集合(状態空間)はかなり狭苦しいものになる.いわばエネルギー保存則が「足かせ」となって,問題が複雑になっているのだ.よって,いったん仮想敵にエネルギー保存則という足かせをはずして,もっと広い状態空間にでていったほうが計算が楽になる.
ラグランジュの未定係数法も制約付き最適化問題を上手に制約なしの最適化問題に置換しているので,よく使われている考え方であるとは思うのだが,文字で見て改めて納得する部分もある.
その2. 本書 (参考文献1) P.121 より.
おまけ:最大エントロピー?最小エントロピー?
本書(参考文献1) のコラム「おもしろゼミナール」ではエントロピーの考え方が情報(工)学と物理学とでは異なると記載されている.
情報(工)学:情報圧縮の観点から,エントロピー最小の条件を考える.
物理学:等重率の原理(実現されうる状態はどれも同じ確からしさで起こる)の観点から,エントロピー最大の条件を考える.
ただし情報(工)学の評価指標に最大エントロピー化なるものがある.この指標は(参考文献2)にある通り,物理学の考え方が入っていて興味深い.以下引用.
基本的な考え方は,「データは特徴をすべて反映してるものだから,データから分からないところの分布は一様分布にしよう
参考文献
1. 加藤 岳生, "ゼロから学ぶ統計力学 (ゼロから学ぶシリーズ)", 講談社, 2013.
2.林部 祐太, "最大エントロピー法についてのメモ", 2013.